人人魚


彼女は人人魚です。
3分の2以上が人間で
先の方だけ魚なので。

天然のフィンがついているわけですから、
好きな所、どこへでも行けます。
肺が拳くらいに縮んでしまうほどの深海へも、
よく潜ります。

雨が水面を打つ様子が好きだそうで、
天気が崩れ始めると、
上の方まで上がって来て、
じっと立ち泳ぎをして待っています。
そこで彼女に会うことができます。

最近では、
海水と自分の区別がつかなくなって来たとぼやいていました。
それは長いこと水中にいるわけですから、
だんだん肌がふやけてきて
うっかりすると意識が染みだして
海洋全体と溶け合ってしまうのだそうです。

それを聞いて私は少し、うらやましくなりました。

自分を放りなげたいような気分の時、
海に 私を受けとってもらえたら、引き受けてもらえたら
どんなにか楽ちんでしょう。
膨大な大波小波の中でただ、たゆたうのだ。

でもやっぱり、
海となった私の中を、石鯛やミジンコに泳ぎ回られるのは
我慢ならないし、
時々しっけた肌をタオルで拭いてさっぱりしたくなるだろうしなあ。

海と私の違いの部分に、
未練があります。
石鯛は刺身で食べたい。
見てほしい。
触れたい。

そう口に出してみると、
彼女は笑ってそりゃそうよねと言います。
人人魚はドライなのです。
それから彼女は
足の甲のウロコをヒラヒラさせて
深く深く潜ってしまうのです。ショート×ショート

四谷銀河鉄道


欄干から見下ろすと
四谷のホームが
ぽっかりと黄色く光っていた。

ほう、上から見るとこんな風か。

電車が滑らかにやってきて
黒っぽい人々を飲み込んで
また走っていった。

それから私も
ガタゴト揺られ
滑らかに帰って来た。

少し不思議な光景だったよ。

ジュラシックパーク

今日は久しぶりに
姉と一緒に台所に立ちました。
豆腐ハンバーグを作っていた時の会話。
「ネギ全部使えばよかったのに。」
「でもネギが強すぎて、ハンバーグやなくて
 ネギバーグになってしまうやん。」
「スティーブン・ネギバーグやね。」
「いや、ネギルバーグやね。」
「せこそうやね。」
それから二人は、大阪のおばちゃんよろしく店主に食いついていく
巨匠の姿を思い浮かべながら
ハンバーグを焼きました。
父さん、母さん、私たちは元気にやっています。


学校2日目。

モデルさんが色んなポーズをとってくれるのが嬉しくて、
「いいね、いいねー、
 お、この角度もすごく良いよ」
と心の中でつぶやきニヤニヤしてしまう。

女性のモデルさんも居たんだけど、
気の強そうな瞳と、動きの速さが
大学の友達Nシ子に似ていた。
勝手に親近感。

クロッキー面白いなァ。
描いてるときの新鮮なワクワク感が
この先どんな風に変化していくのだろう。

お元気ですか





ご無沙汰です。
もう初夏の陽気ですね。
みなさんいかがお過ごしですか?

ワクワクえんをここのところ更新してなかったけど、
覗きに来てくれてる人はまだいるかしら?

最近の私はというとですね、

・小さいおっさんのミイラを発見しました。(写真1枚目)
 かなり面長ですね。幸せそうに笑っています。
・黄昏に染まる川原に連れて行ってもらいました。(写真2枚目)
 野花はいいですね。良い季節なので、気がつくとそこら中に
 キュートな花が咲いていますよ。

それからね、絵の学校に通うことにしました。

昨日、一回目の授業があったばかりです。
学校といっても、講義や指導はほとんどなく
モデルさんを囲んでひたすらクロッキーをしていきます。
一日4時間、週3回、それを2年間。

この1年間、ほとんど絵を描いてませんでした。
描きたいものが描けず試行錯誤しているうちに
イメージが萎縮して、面倒臭くなって腹が立ってくるからです。
自分は絵がそんなに好きじゃないんだろうということにして、
丸めて頭の片隅に放り投げていたけど、
もう一度拾いあげることに決めました。

そうしたらそれまで悶々としてた気持ちが少し楽になって、
食欲も旺盛になりました。
絵はきっと、私の人生の何かしらキーワードなんだな。

自分が気持ちいいと思うやり方で
線を引いたり、色を選んだりできるようになったら、
きっと楽しいぞ。

それが現実的なこと(職業とか給料とか)にどうつながっていくか、
正直に言うとわからないけど、
今は目をつぶって ただ飛び込んでみようと思います。

学校に入るときに決めたことを
うっかり忘れないようここに書いておこう。

保身に走らない。
うまく描こうとしない。
必要以上に人を誉めたりしない。
今の自分の手と目がつかむ物を描こう。
腐る程描いてみよう。


初授業の一枚。
怒ったような顔をしていたモデルさん。