妄想マラソン


最近、妄想マラソンを始めた。
何事においても、
イメージトレーニングというのは大事なのだ。
皆もやってみるといい。
私はこれを始めてから、
すこぶる調子がいい。

夜、枕元にバナナを2本並べて寝る。
(私の妄想マラソンは、前日からスタートするのだ。)
朝、起きざまにバナナを食べ、
ストレッチをしてスニーカーを履く。

まずは体ならしに近所を軽くひとまわり。
はすむかいの岡田さんの宅配ボックスから
ヤクルトを一本拝借。
腸内環境を整える。

準備万端。
はじめはゆっくりと、徐々にテンポをあげていく。
右足。左足。リズムよく体重をのせていく。
ヒッヒッフー
ヒッヒッフー
妊婦のリズムで呼吸している自分に気づく。
いけない、いけない、正しくは
ヒッヒッフーフーだ。
2回連続で吸って2回連続で吐くんだ。

だんだん路地に入り込んでいく。
よく買い物をする八百屋を通り過ぎる。
折れた大根が段ボールいっぱいで100円。
店主のおばあちゃんは、大きな帽子をかぶったまま
テレビを見ている。

イチョウの木。コンクリート塀。猫の背中。
何でもかんでもを、
白っぽい光が包んでいる。
朝の光の中を走っていると、
一日が丸ごと自分のものになるような気がして
嬉しくなる。

大きな公園についた。
池の周りを、もう先客が走っている。
おじいちゃん、お姉さん、サラリーマン、高校球児みたいな子。
色んな人が居るけど、
みんな同じ顔をしている。
心が 頭の斜め上50センチにあるような、
ふぬけた、それでいて凛々しい顔。

私も輪の中に加わる。
おじいちゃんランナーの足音が
後ろからぴたりとついて来ている。
半周を過ぎた頃から息があがってくる。
残りの道程をしきりに確認してしまう。
おじいちゃんランナーに追い抜かれたところで
足を止めた。
大きく息を吐き、ゆっくりと歩き出す。
無理をしても続かないし。
ウォーキングに切り替えて家まで帰ることにする。

道すがら、小さな古いパン屋を発見。入店する。
ハムとチーズのホットサンドが出来たてだ。
牛乳と一緒に買って いそいそと店を出る。
(近所の岡田さん用に、
クロレラを買うのも忘れない。)

大股で歩く。ずんずん歩く。
クリーニング店の角を曲がり、
駐車場を抜け、
公衆電話の生き残りを一瞥して
短い横断歩道をわたり、定食屋を通り過ぎ…


ここら辺で妄想力も息があがり、
妄想マラソン、終わり。ショート×ショート

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